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  ~懲りない傾向~

喫茶筑波

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「灯光」に続く第2作目。つくば市のノスタルヂ屋店主、松浦正弘さんの小説「喫茶筑波」が刊行されました。表題の通り、筑波研究学園都市のどこかで営業されている喫茶店の主人とその家族、常連でやって来る旧車に乗ったお客たちの、日常の一コマを描いた、今回はどちらかといえば短編として仕上がっています。

前作から2年ほど経ったでしょうか。「灯光」に比べたら軽くなっている。軽薄化したのではなく、軽やかになっているという意味です。この1年、プロットだけはうかがっていました。相変わらず照れ屋の松浦さんは

「いえね、なかなか進まないんですよ」

などと言っておられましたが、珍しく目がうそつきで、書くことが楽しいんだという顔をしていました。テクニックの上手下手ではなくて、その楽しくて書いたという気分が現れています。あるいは、喫茶店にせよ家族にせよ、物語の進行を手伝う数々の旧車にせよ、松浦さんにとって思い描いてみたかった別のライフスタイルを、そのまま持ち出してきたようにも感じられます。

その軽快なテンポは、2作目の馴染んだ執筆ということもあるわけですが、仕掛けた物語を早く読ませたいという気持ちが走ってか、走りすぎ? という部分もあって、

おやおやっ? もうおしまい? と思わされたのが正直なところ。

そこが、どちらかといえば短編小説、の所以で、登場する旧車の説明の仕方や、旧車たちのある風景や、それらが走るシーンはいささか説明的。ただしクルマはあくまで物語の世界観に華を添える役目であって、主役ではないから、気になることではないのです。むしろ、華を添えている旧車を通して、古いクルマ、古くなっていくクルマに傾倒している人達に、そのクルマとどう向き合っていくか。クルマたちが何を語っていくのかを、そっと教えてくれます。

それにしてもね、松浦さんのことだから、旧車についてひとつのメッセージを込めているのだなと読んでいったら、なんと旧車たちはほんとに華を添える役目であって、何気なく仕掛けている伏線を危うく見落とすところだったですよ。

油断ならない(笑)

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